2024-09-23

PyCon JPにおける登壇者採択に関する見解

 一般社団法人PyCon JP Association 理事の寺田です。

昨年のPyCon JP APAC 2023および来たるPyCon JP 2024(以下、「本イベント」といいます)の登壇者選定に関して、インターネット上で疑義が一部で取り沙汰されている状況を確認しております。

私たち一般社団法人PyCon JP Association(以下、「当法人」といいます)は、PyCon JP 2024において、参加者の皆様、企業スポンサー、Pythonコミュニティ、そして運営に携わる多くのボランティア主催メンバーを含むすべての関係者に対し、安心してカンファレンスにご参加いただける環境を提供したいと考えています。本イベントの登壇内容の選定に関するプロセスについて、当法人の見解をお伝えします。

 一般社団法人PyCon JP AssosiarionおよびPyCon JPについて

当法人は日本国内外の Python ユーザーのために、Python の普及及び開発支援を行う為に、継続的にカンファレンス(PyCon)を開くことを目的とした非営利組織です。Pythonユーザーが一堂に会し、互いに交流を深め、知識を分けあい、新たな可能性を見つけられる場所を継続的に提供し続けることが、当法人の存在意義です。

本イベントは、Pythonを使用するエンジニアや開発者が一堂に集まり、技術や経験を共有し、新たな交流や発見を生み出すことを目的としています。なお、本イベントは研究成果の妥当性を検討・議論することを主たる目的とするアカデミックな学会とは異なり、より多くの参加者に新たな知見や出会いを提供するコミュニティの場として運営しています。

登壇者の採択について

昨年のPyCon JP APAC 2023と同様、PyCon JP 2024においても、透明性と公正性を重視したプロセスで登壇者の選定を行っております。具体的な選定方法や背景については、こちらのブログ記事をご覧ください。

本イベントの登壇者採択に関係する役割分担は以下の通りです。

  • プログラムチーム (2023年はコンテンツチーム):本イベントボランティア主催メンバー(スタッフ)で構成され、登壇者募集や選定基準の策定を担当します。
  • 外部レビュアー:本イベント主催メンバー(スタッフ)外のコミュニティメンバーから選定され、多角的な視点で登壇内容を評価します。
  • プロポーザル採択会議:最終的に登壇内容の決定を行う場です。
  • プログラムチーム(2023年はコンテンツチーム)リーダー・座長:議論の取りまとめ役であり、最終的な意思決定を行います。

私たちが登壇者を選ぶ際、最も大切にしているのは「参加者の皆様に楽しんでいただけるか」という点です。
本イベントの登壇募集内容はPythonのユースケースの広がりとともに、Web開発、データサイエンス、IoT、機械学習等の幅広い分野に多岐にわたります。
Pythonに関する幅広いトピックに対応できるよう、多様な視点を取り入れながら議論を重ね、最適な発表内容を選定しています。その結果、必ずしも新規性や革新性が最重要視されるわけではなく、初心者向けに概要をわかりやすく解説する発表が採択されることもあります。

特定の企業や個人の優遇について

本イベントでは、特定の企業や個人を優遇するような選定は一切行っておりません。

採択プロセスにおいて特定のスポンサー企業や個人を優遇することは、本イベントの目的である「技術や経験を共有し、新たな交流や発見を生み出す」という観点に反するものであり、また、当法人の設立趣旨である「継続的にカンファレンスを開催する」という使命とも相容れない行為です。
さらに、このような不公正なプロセスが行われれば、スポンサー企業やコミュニティメンバーとの信頼関係が損なわれ、イベントの存続自体が危うくなる可能性があります。したがって、本イベントにおいては特定の企業や個人を優遇するようなインセンティブは全く存在しません。
私たちは、すべてのスポンサー企業や参加者との透明で公正な関係を維持し、コミュニティ全体が安心して参加できる場を提供するために、今後も公平な選定プロセスを追求してまいります。

プロセスの改善について

採択のプロセスについて、今後の改善余地があることも事実です。

例えば、本イベントに長年参加されている方が採択に有利な知見を持っていることを理解しています。これまでに何度も登壇経験のある方は、参加者が楽しめるコンテンツの温度感を把握しているため登壇が採択されやすい傾向がある一方で、初めて応募される方々にも公平に機会を提供することは重要です。

私たちは、多様な視点や新たなアイデアがコミュニティにとって重要であると考えています。そのため、登壇者の選定においては、過去の経験だけでなく、新規の応募者にも門戸を広げる努力を続けております。また、選定プロセスにおいてはできる限りバイアスを排除するため、複数登壇を防ぐための確認段階まで応募者の名前をマスキングするなど、できる限り公平性を確保するための対策を講じています。

採択のプロセスやオペレーションをより良いものにしていくためにはどうすれば良いのかについて、今後も採択プロセスの改善に努めてまいります。

Pythonコミュニティの多様性と当法人の挑戦

近年、Pythonのユーザー層は急速に広がりを見せ、Web開発、データサイエンス、IoT、機械学習といった幅広い分野にわたる多様な技術者や専門家が集うコミュニティとなりました。これは、私たちにとって非常に喜ばしいことであり、誇りに感じています。

しかし、コミュニティがこのように急成長し、多様化していく中で、運営としても、そのスピードに適応し続けることは決して簡単なことではありません。私たちは、多くの新しい視点や多様な背景を持つメンバーを迎え入れることができる一方で、どのようにしてこのダイバーシティ(多様性)を維持しつつ、全員が居心地良く参加できるコミュニティを継続していくかという、インクルージョン(包括性)の課題に直面しています。

当法人は、権威的な存在ではなく、あくまでコミュニティの一員に過ぎません。このコミュニティをより良いものにしていくためには、参加者、スポンサー、そしてボランティア主催メンバーをはじめとするコミュニティの皆様からのご支援が必要不可欠です。皆様からの支援や建設的なご意見、ご提案には心から感謝申し上げます。

一方で、支援や意見が私たちの成長にとって大切であるのと同時に、個人攻撃や誹謗中傷、あるいはそれに類する行為は、私たちの目指すオープンで協力的なコミュニティの発展に反するものです。そのような行為は、私たちだけでなくコミュニティ全体を傷つけることにつながりますので、どうか控えていただきたいと強くお願い申し上げます。

私たちは皆様からの建設的な意見や提案を真摯に受け止め、コミュニティの成長に活かしたいと考えています。しかし、もし攻撃的な言動がエスカレートし、私たちやコミュニティの健全な運営が脅かされる場合には、残念ながら弁護士など専門家の協力を得て、法的措置を検討せざるを得ません。このような事態は避けたいと考えておりますので、皆様には引き続き、建設的なご意見でのご協力をお願い申し上げます。

私たちは、皆様と共にこのコミュニティをより良いものにしていきたいと願っており、これからも挑戦し続けます。今後とも、ご支援とご協力を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。